Elephant in the Room

フィクションと死と医療をつなぐ実験的ブログ

野良猫の一生

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 ある日の朝、庭で野良猫が息をひきとっていた。

 冷たく体をこわばらせ、体毛は抜けかかっていた。

 

 よく近所で見かけた野良猫だった。

 目を合わせると、一目散に逃げていってしまった野良猫。

 いつも近くにいながら、どんな暮らしをしていたのか、まったくわからない。

 

 でも、その場所を、

 庭の大谷石でできた縁側、いま横たわっているまさしくその場所を、

 野良猫は愛していたにちがいない。

 自分の死に場所として選んだのだから。

 

 野良猫の死に場所は、

 冬は日当たりがよく、夏は涼しく風通しがいいその場所は、

 ぼくもお気に入りだ。

 なんだ、ぼくと趣味が一緒だったんじゃないか。

 

 野良猫はぼくの心のどこかに、ちょっとした爪痕を残した。

 誰しも、この世を去るときは孤独だ。

 でも、君はもう孤独じゃないよ。

 

 今日この世を去っていった、名もなき野良猫に、

 さようなら。

 

 

 

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