Elephant in the Room

フィクションと死と医療をつなぐ実験的ブログ

想定復元というフィクション

 三内丸山遺跡(青森市)を訪れた。

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 最後にここを訪れた時(といっても10年以上前だろう)には、プレハブのような資料館とまだ整備されていない広い公園のような空間がただ広がっていただけであった。どれほど貴重な遺跡なのか、その価値がよくわかっていなかっただろう。

 それが、今では縄文時代にはとても似つかわしくない立派な資料館(それも入館無料!)がそびえ立っていた。遺跡には年配のガイドがおり、津軽弁の訛りのある軽やかなトークを聞きながら、自由について行って遺跡内を散策することができた。

 ここで20年以上、ボランティアのガイドをつとめているという80歳代の男性は、驚くべきことを口にした。

 「ここにあるものは本物ではありません。」

 「見えているものはほとんどすべて復元、それも想定復元です。」

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 たしかに約5,500~4,000年前の遺跡だ。ほとんど何も残っていないのも無理はない。土器や石器などは残っているが、骨などの有機物はほとんど分解されてしまっているのだ。

 残っているものは掘り下げられた穴。建造物の模型は穴の配置や大きさ、推定重量などから、当時の状況を推定したものなのだ。

 さらに、その穴そのものは、保存のために地中に埋めてある。展示してある穴も、それを模造したものだ。

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 お墓(と想定されている)穴が道路に沿って多数みられる。骨も残っていないため、どのように、どの向きで葬られたのか、答えはわからない。

 子どもの遺骨は土器に入れられて葬られていたと考えられているが、想定される集落の人口に比べて、子どものお墓が多い。

 当時の推定寿命は、30歳代だったとみられているそうだ。

 

 出土した板状土偶、ひすいの装飾品、針、縄文土器などの様子から、この縄文時代にすでにある程度の文明をもっていたと考えられる。

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 約4,000年前になると、このムラはなくなってしまう。寒冷化など気候のせいで定住できなくなったと考えられている。

 

 約5,000年前のこの地の生に思いを馳せる。

 ここでどんな生活が営まれていたのか、誰にもわからない。想定復元してみるしかないのだ。

 遺跡とは、まるでフィクションのようである。

 

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