Elephant in the Room

フィクションと死と医療をつなぐ実験的ブログ

いまだ経験していないことを感じる

 以前読んだ本。あるALS患者の本棚で見かけてからというもの、心のどこかにひっかかっていて、遠い記憶をたどってみることにした。

逝かない身体―ALS的日常を生きる (シリーズ ケアをひらく)

逝かない身体―ALS的日常を生きる (シリーズ ケアをひらく)

 

 そういえば、ブログで紹介したことがあることを思い出し、自己レビュー。

文脈依存性アプローチの限界(1) | 地域医療日誌 by COMET [はてなブックマークで表示]

 

 ALSという病をもって生活する(あるいは闘病する)、ということはどういうことか、全くわかっていなかったことに衝撃を受けたのだろう。

 経験していないことを想像することの難しさ、患者の苦しみの物語りをかいつまむ(文脈依存アプローチ)だけでは理解できないことを強く認識した。

 

 本文から拾ってみる。

 ある晩、ひとりの若い看護師が病室にやってきて母に諭した。

「不自由さは想像できます。島田さんを真似ても一分も私には我慢できません。でも、大変だろうけれど慣れていかないと自宅に戻ったらご家族が大変ですよ。ここにいるあいだに訓練しておかないと家族がバテてしまいます。がんばってください。」

 これもよくある話で、看護師は患者に共感を示すつもりが、だんだん教育的になっていく。

 私は、なんて勝手なことばかりを言う人だと、なかばあきらめてしまった。それにトータリィ・ロックトインをそんな容易い状態だと決めつけないでほしいとさえ思った。ALSの看病をしたこともなく、文献でしか病気のことを知らないくせに!

 

 いまだ経験していないことをどのように感じることができるのか。少なくとも本書の読書体験が、今のALS患者のケアに何らかの影響を与えているのかもしれない。

 そして、ALS患者が本書を手にしたとき、どのようなことが起きるのか―。

 

 フィクションより具体的かつ直接的だ。ALS患者または家族、そしてケアに関わる人々という、状況や関心が似通った人にとっては、格好の教科書になるだろう。

 

 そして、そうではない人の場合、(多くの人はこちらに属しているだろうが、)他の病気の治療や医療全般にどう生かすかは、読み手側の能力が試されているのかもしれない。

 

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