象の操作室

Elephant in the Room

フィクションと死と医療をつなぐ実験的ブログ

救済のためには何をしてもよいのか?

 NHKスペシャル 未解決事件「オウム真理教」が2夜連続で放送された。

NHKスペシャル 未解決事件「オウム真理教」番組概要

 番組では、NHKが独自に入手した教団内部の700本を超す音声テープと元幹部たちの証言をもとに、教団がどのように暴走していったのか、実録ドラマとドキュメンタリーの手法で詳細に描き出そうとした作品だ。

 地下鉄サリン事件が起きてしまった背景には、ふたつのポイントは見逃せない。

組織を守るため

 バブル時代を背景に教団が拡大していく中、「日本の救済のために」という理念のもとに教団幹部らが組織を守ることを重視しはじめ、ついに信者の死を隠蔽する。

 組織に帰属すると、組織を守るために懸命になる。これは組織を重んじる日本人のメンタリティではあるが、まさに組織の思考停止状態に陥っていたと言えるのではなかろうか。

 これをオウム真理教だけの特殊な問題を片付けてはなるまい。どのような組織にもこれと同質の構造がみられることを、われわれは忘れてはならない。

 電気をつくるためには、・・・
 生活を豊かにするためには、・・・

 このような論理が日本人のメンタリティとして根付いてはいないだろうか。

 命の救済のためには、何をしてもいい。医療業界という組織には、そういった傾向はないだろうか。もう一度振り返ってみる価値はあるだろう。

経験していないことを想像できない

 県警や警視庁は、早期に宗教法人の強制捜査に踏み切ることができなかった。宗教法人に見せかけてテロ行為を行うという前代未聞の組織に対して、関係者は「想像力が不足していた」と語っている。

 いまだ経験していないことに、どう立ち向かうか。今回の東日本大震災でも「想像力の不足」という欠点が改めて露呈した。

 これまでは「前例がない」ことを理由に拒否することで、古い伝統が維持されるというメリットが享受できたかもしれない。既得権益を守ってくることもできたのかもしれない。しかし、このような歴史が「想像力の不足」を育んできたのではないだろうか。

 経験していないことに立ち向かう医療現場も同じことだ。医療従事者は、病気や死というものを自ら経験することなしに、立ち向かっている。

 いまだ経験していないことにどう対峙していくのか。

 フィクションは可能性を秘めている。

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