象の操作室

Elephant in the Room

フィクションと死と医療をつなぐ実験的ブログ

レイモンド・カーヴァー

 作家は現象を巧みにコトバに変換して表現する。

 もちろん、フィクションでは、その現象が実際に起きたことかどうかは問わない。しかし、コトバの表現には、あたかもその現象が目の前で繰り広げられているかのような臨場感が必要だ。

 作家はそのような技術を兼ね備えている。

 フィクションは現象をコトバに変換する様式のひとつであるといえるだろう。

 レイモンド・カーヴァーの短篇集を読んだ。

Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫)

Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫)

大聖堂

 妻の知人の盲人が家に泊りにくることになるという場面が描かれている。

「大聖堂がどういうものなのか、あなたにうまく伝えることができないんです。」

 関心のないこと、見ていると思っていて実はよく見えていないことがどれだけ多いことか。

 現象をとらえてコトバにして伝えることの難しさが伝わってくる傑作だ。

ささやかだけれど、役に立つこと

 子供を亡くした両親と、毎日ただひたすらパンを焼き続ける子供がいないパン屋。二つの物語がどのような結末を迎えるのか。

「あたしは忙しいんだよ。仕事がいっぱいあるんだ」

 愛するものの死に対する絶望感を描きながら、生きるとはどんなことか、社会はどうあるべきか切実に考えるよう読者に迫ってくる。医療者側としても、学ぶことの多い作品だ。


 他にも「収集」「足もとに流れる深い川」など、喪失や死を取り扱った作品が並ぶ。

 それにしても、フィクションをじっくり読みこむことは、とても疲弊する。体力がいることだ。

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